KG-Chartに付属のパレットは、独自に作成し調整したものですが、順次再作成中です。
その最大の理由は、カラーマネジメントの環境を構築したことです。
(カラーマネジメントについてはこの記事が参考になります:
“写真派”に贈る2010年夏の液晶ディスプレイ選び)
画像データの本来の色と、画面で見た色と、実物の色を一致させるのは非常に難しいのが現実です。パソコンのOSにはカラーマネジメントの機能があるのですが、それを有効活用するにはハードウェアが対応している必要があります。今回、事の重要性を鑑み、やっと念願の環境を整えることができました。(もっとも、業務用ではなく、一般向けの機材を使用していますが。)
作業場
作業場の電気は色温度5000K~6500Kの蛍光灯を使います。大体5500K~5700K位のものを使うのが普通らしいです。(なお、他の色の電灯や色のついた壁や家具は避けた部屋が必要です。壁の色の反射も影響します)
アメリカではOTT LITE(5700K)やDay Light (5000K~6500K)の電球置き換え型の蛍光ランプがあるのでそれを使います。日本でもおそらく同様のランプまたは蛍光灯が販売されていると思います。色温度に気をつけて購入します。
(アメリカでは電球が主流で、日本のような環状の蛍光灯は使われていないのです!)
当方は、Day LightとOTT LITEを使用しています。部屋全体で5500K~6000Kというところでしょうか。
ディスプレイ
ディスプレイは液晶ディスプレイでIPS方式の広色域のものを使います。
画面の色域はsRGBにします。(6500K、ガンマ2.2 MS-Windows環境が前提ですが)
さらに、ハードウェアのキャリブレーションを行って、正確に色が表示されるようにします。(例えばデータカラー社製のSpyder3 Elite等) この環境を整えるとによって、データのRGBの値の色が画面に表示される際に正確に表示されるようになります。
Macの場合はもう少し設定が簡単かもしれません。いずれにせよハードウェアのキャリブレータは必要だと思います。
当方は、ディスプレイは、HPのLP2475w、カラーキャリブレーションはSpyder2Proを使っています。
スキャン
データの取り込みは、色見本帳の性格上、スキャナよりもデジカメのほうが正確です。また、デジカメも、一眼レフデジカメが必要です。撮影の際は、色域はsRGBでRAWデータで撮影し、グレーカードと呼ばれる色温度確認のカードと同時に撮影し、撮影後に、現像ソフトウェア(例:AdobeのLightroom)を使って、グレーカードを元に色温度を調節します。これにより、色のデータが正確に取り込めます。現像(と以下の調整)の際は彩度と明るさが統一されるように気をつけます。
調整
この後は、撮影した画像を見ながら、各糸の色データをサンプルし(RGBを決める)、その色をある程度の大きさの塗りつぶし領域で表示した上、上記の環境で実物と目で比較しRGBを微調整します。この作業が一番手間がかかります。当方では、この作業はKG-Chart用に開発した専用のソフトを使用しています。
なお、明るさが微妙に異なると色が違って感じられてしまうので、部屋の明るさと、ディスプレイの明るさができるだけ同じようになるように調整します。(一眼デジカメでEV値が大体一致するようにするのが簡単です)
さいごに
このようにして、一色一色丹念に色を調整して、パレットが出来上がります。
現状のKG-Chart付属のパレットは、残念ながらこのような環境を整えることができる前に調整して作成したため、微妙に実物の色からずれてしまっているようなので、今回の作業でできるだけ改善できればと思っています。
なお、逆に言うと、このような環境(特に部屋の電気の色温度とディスプレイのキャリブレーション)を整えないと、画面の色と実際の糸の色が一致して見えないことになります。
ただ、画像からの変換に関しては、環境によらずより精度よく変換できることが期待できます。